第65回 月と団子盗み

中秋の名月を「すすき」の間から見ようとコツ通り商店街では毎年満月の夜にウォーキングを行っています。

10月7日(土)前日の嵐が嘘のような雲ひとつない空、13名で向島百花園へと歩きました。今年参加された若い男性(江戸川区より転入)「南千住図書館は、すばらしい。特に1階の郷土資料館は他区から引越して来た人でもすぐ荒川に溶け込める資料が豊富にあり、地元の人達とすぐ仲良くなれてよかった。」と喜んで私に語ってくれました。我々住民もふるさと文化館と図書館を利用して知識を高め、自分の住んでいる町を愛してもらいたいと思います。

戦前の昭和16年頃まで南千住のこの辺の庭がある家や裕福な家ではお月見の行事をやっていました。 供え棚を作り、その上に三方に山のように盛った団子をのせ左右に「すすき」の穂を飾り奉書を立て縁側の前に置いて満月を見ていました。

我々近処の子供達は、ガキ大将の処所に集まり、大将の指導の元に5寸釘をたたいて先を平ったく伸ばし、それを竹さおの先に結えつけて「団子盗み」の道具を何日もかけて準備しました。その竹ざおを持ってガキ大将を先頭に静かに抜き足差し足で木戸から侵入し、かざってある団子を突き刺してかっぱらってくるのです。

スリルと緊張と団結力と用意周到な準備が必要でリーダーの指導の下に共同作業です。楽しかったです。今思うと盗まれる家人は、百も承知でやらせていたのではないかと思います。時には咳払いをしたり、「コラ」と大声をあげたりしていましたが、行くと終わりに菓子等をくれた家もありました。

先日の新聞に俳人の坪内さんの記事で「子供の冒険心を刺激するユーモアに富んだ行事である。そして、子供達がお供えを取りに来てくれることは、その家に福をもたらす神様であると思われ、盗んだ子供達は、丈夫に育つといった縁起の良い行事であったそうですが、 昭和18年頃から無くなってしまいました。」他人の家の物を盗む事が悪いことであると禁止されたのかも知れませんね。 その前日10月6日諏訪台(日暮里)で発句会があり、40名位の集まりの内で年配の方が多かったようですが、誰一人「団子盗み」を知りませんでした。

江戸時代には「中秋の名月は10年に9年は見えず」と言われたそうで、雲が多い15夜を「無月」、雨が降ったら「雨月」、満月の翌夜の月は16夜「いざよい」と言われてました。実に風流ですね。 たまには空を見上げて下さい。幸せな心になりますよ。 2006年11月13日

すまいるたうん16号