「お正月は休めるんですか?」
この業界に入って二十五年、何度となく聞かれた質問です。よほど新聞記者は休みがないと思われているのでしょうか…。もちろん年末年始も出勤する記者やデスクはいますが、きちんと交替で休んでいますよ。
それでも、日々のニュースをお伝えするのが新聞の役割ですので、大きなできごとや事件があれば、年末年始であっても担当の記者が出動します。
墨田区の東京スカイツリーは、今年の五月二十二日に開業します。すでに完成時の高さ六百三十四メートルに到達、外観はおおむねできている姿を一目見ようと、今も連日、大勢の見物客が訪れます。
したまち支局のスカイツリー担当記者は、元日にもスカイツリー建設現場近くへ行き、周辺の様子などを取材しました。開業前の正月のスカイツリーはこの日でなければ取材できませんので、今後のためにも駆けつけたのです。
このほか、年末年始ならではの連載や特集記事も掲載されました。
元日から始まった「龍脈のみやこ」という連載は、したまち支局の記者が取材・執筆した記事で始まりました。登場したのは、浅草寺の寺舞「金龍の舞」を継承する方々でした。
最終面の「TOKYO発」面で、やはり元日から始まった連載「福を継ぐ人々」では、5日に掲載された「幇間(太鼓持ち)」が、したまち支局の記者による記事です。
また、元旦に折り込まれた別刷り紙面の一つ、「第4部 新聞で学ぼう」という子どもたちにエネルギー問題や防災について楽しく学んでもらう紙面では、最初のページに墨田区立緑小学校の子どもたちが大きく掲載されました。
この紙面を担当する本社のデスクから「表紙にふさわしい小学校はないか」と打診があり、したまち支局の記者が取材したことのある緑小を提案しました。東京スカイツリーのすぐ近く、本年度で創立百周年、関東大震災と東京大空襲、二つの災禍を経験した学校。しかも、被災地へ応援メッセージを送る活動をしている学校。本社のデスクが「ぜひ」と採用、したまち支局の記者が取材しました。
どの記事も、したまち支局の記者が何度か取材した方々に、年末年始の企画で、あらためてお会いして別の角度から詳しく取材したものです。したまち版の日々の小さな記事の取材が、こうした大きな企画に生きた例だと思います。
私も年末、TOKYO発「東京トリビア年末ワイド版」という企画で、「浅草寺のおみくじは『凶』が多い」という記事を取材しました。紙面に載せた「凶」のおみくじは、実際に私が新年の健康運を占ってひいたものです。お酒を控え、適度な運動でもしようかなと思っています。
いろいろな記事や、正月らしい明るいニュースが数多く紙面を飾りましたが、暗いというか、ちょっと寂しい話題も、新年の紙面に出ました。6日したまち版「南千住の『弁天湯』廃業」です。みなさまのお近くにある銭湯ですから、ご存じの方も多いでしょう。廃業理由が東日本大震災というのも、この新年を象徴しており、なおさら寂しさを感じました。
東北を襲った大震災が荒川区の銭湯の廃業につながり、福島の原発事故による放射能汚染は荒川区にも及び、欧州で起きている金融危機は荒川区の産業にも影響を与えているようです。日本で、世界で起きることと、荒川区をはじめとした東京下町で起きることとは、遠いようで、必ずつながっていると感じます。
広い視野を持ちながら、路地裏でおきる市井の方々の暮らしや声を地道に掘り起こす取材を、これからも続けていきたいと思います。どうか本年も、東京新聞を、ご愛読くださいますよう、お願い申し上げます。
(東京新聞したまち支局長 榎本哲也)

すまいるたうん202号