災害は怖いけど、準備はできる

編集委員(元したまち支局長)
植木幹雄
三月十一日の東日本大震災。南千住の皆様はいかがでしたか。私たちの仕事部屋は七階でしたが、激しい揺れにもかかわらず、被害は無理に積み重ねた私の資料入れからファイルが落ちてきた以外は、特に無し。しかし、私の故郷福島県を始め、東北の東側は地震と津波で壊滅状態。日本が世界有数の地震国であることを再認識しました。
加えて、死者・行方不明者約三万人という震災以上に紙面を占領している福島第一原発の事故。私が小学から高校までを過ごし、母や多くの友人がいるいわき市の北端からわずか約三十キロ。報道が危機的状態にある原発を優先するのは当然ですが、いわき市の様子はほとんど分かりません。思いついたのがインターネット。グーグルという検索サイトに、例えばいわき市という地名と、地震などのキーワードを打ち込み、左側のボタンで映像を選ぶと、地元の人たちが撮影して投稿した映像を見ることができます。これを思いだし、次々に見てみましたが、見知っている場所も多く映し出され、被害の大きさにがく然としました。
話が戻って、当日困ったのは電話です。自宅、被災地の友人、親戚に電話しようとしても、もちろん通じません。ならばつながりやすい携帯メールで、とスタッフが一斉にメールを送り始め、次々に連絡が取れましたが、私の携帯は何度試しても駄目。普段から通話可能エリア狭くいらだっていましたが、この時ほど恨めしく思ったことはありません。なら何でそんな携帯電話を、と思う方もいるでしょうが、発売当時はさまざまな機能が使える多目的スマートフォンとして、かなり話題になった物です。先輩記者も同じ携帯会社の携帯で「こりゃ、別会社のをもう一台買うしかないか」と一緒にぼやきました。この携帯会社の方何とかして!。
さて、皆さんは災害に備えた用意はしていますか。私は、阪神大震災の時に連載企画を担当したので、電気、ガス、水道というライフラインが機能しないときの怖さをつくづく感じました。それと元探検部系サークル経験者として、周囲からは「大げさな」と言われながらも、結構な水や食料、照明、電池などを備蓄しています。最近は避難所の態勢も充実していますが、備えあれば、です。
今回も、ペットボトルの水、乾電池、カップ麺、ガソリン、灯油などが品薄になりましたが、ガソリンなどを除くと、普段はバーゲンの対象になっている物が多く、少しずつ買い置きしておくのが理想です。
誤算はガソリンです。私は、ガソリンメーターが三分の一を切ったら必ず満タンにしていましたが、最近私が車に乗らなかったせいもあり、車は二台ともほぼ空っぽ。いざとなったらいわきの母を迎えに行く必要もあり、「休業」の看板が掛かったガソリンスタンドに朝五時から並び一週間がかりで何とか満タンにしました。携帯電話とガソリンはうかつでした。
何を用意すればいいかは台風か、地震か、大火災かなど、現象と規模によっても異なりますが、今回の震災を受けて、雑誌が対策を特集したり、対策本も出始まっています。参考になると思います。でも、本の通りにすると、備蓄は相当な量になります。代用できる生活用品もあるし、各家の現状を考えながらそろえましょう。
意外に役立つのが登山用品です。本来携帯用に作られているのと、故障が少なく、いざとなったら過酷な環境でも生き延びられるような品々もそろっています。このため、多くが災害時にも使えます。ただ、屋外を想定して作られていますので、コンロや照明でガソリンを使う物は、屋内での使用は危険です。
また、金曜朝刊ゆめぽっけにある「低山ハイク」は毎月最終金曜に、山の安全講座を掲載しています。山のサバイバルは、災害サバイバルにかなり役立ちます。是非ご一読を。今回は、震災を受け八日の紙面で紹介しました。