乳幼児突然死症候群(SIDS)という、原因不明の病気でお子さまを失った方の話を、墨田区内での取材でお聞きしました。
取材は十月四日でした。まだ幼い、あるいは生まれたばかりのわが子を亡くした母親、父親たちのグループによる行事でした。亡くなった子どもたちを、天国に帰った「天使」と呼び、十月四日を語呂合わせで「天使の日」として、この日に「天使」へのメッセージを書いた風船を天へと飛ばそうという行事です。「天使」となったあとも、わが子のためにしてあげられることがある。そう母親、父親たちが感じて、これからも元気に生きていこうという思いから企画されたそうです。記事は、翌五日のしたまち版に掲載されています。
この日、集まった二十五人ほどの遺族、すなわち「天使ママ、パパ」のみなさんに話を聞きました。この中に、SIDSでお子さまを亡くされた方がいました。
名前の通り「突然死」で、亡くなられる前には健康状態に何の問題もなく、事前に何の兆候もないそうです。参加した母親のご令息の場合、まったくいつも通りに寝て、夜中にミルクをあげて、そのあと早朝、目覚めたら、冷たくなっていたというのです。その間、わずか三時間ほど。ご家族の衝撃、絶望はどれだけだったか、想像もつきません。
このSIDS、原因はまったく不明で、病気の発生率を高める「危険因子」がいくつか考えられる、という程度しか解明されていません。厚生労働省によると、この病気で亡くなる赤ちゃんは年々、減る傾向にあるものの、一昨年には全国で157人が亡くなり、ゼロ歳児の死因の第3位だったそうです。
幼くしてわが子を亡くした、これらグループの親たちは、お互いの交流のほか、このSIDSの存在を広く社会に知らせる活動もしています。この活動のシンボルであるクリーム色のリボンを、さまざまな機会に妊婦や母親に配布して、SIDSの危険を少なくするための育児の注意点を啓発しています。それは、▽仰向け寝で育てる▽たばこはやめる▽できるだけ母乳で育てる▽赤ちゃんを暖めすぎない▽なるべく赤ちゃんをひとりにしない、というものです。
めったに起きない病気ですが、何の前触れもなく赤ちゃんが亡くなる病気ですから、赤ちゃんを持つすべての親にとって、無関係ではないと言えるでしょう。詳しいことは、都庁や区役所、産婦人科医院などに問い合わせてみて下さい。毎年、十一月が、このSIDSの対策強化月間となっており、今年も啓発活動が行われるようです。
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話はまったく変わりますが、荒川区に関する話題を一つ。
最近、「荒川アンダーザブリッジ」というテレビドラマが放映され、話題を呼びました。舞台は荒川河川敷。そこに住んでいるのは、河童(かっぱ)、「金星人」だという女性、星の顔をしたロック歌手、オウムの顔をした男、ちょんまげを結った元美容師…と、奇妙な人々ばかり。その河川敷に、大財閥の御曹司が、この個性的な人(?)たちと一緒に暮らすという物語です。
このドラマを観て、あれ? と思いました。画面に登場する荒川にかかる橋のたもとに「荒川区」という看板があります。荒川区に、こんな場所があったか、思い当たりません。
これは、茨城県などでロケをした場面で、荒川区ではないそうです。茨城県常総市の観光物産協会の公式ホームページに、市内の鬼怒川河川敷などでロケが行われたと書かれています。
そもそも荒川区には、荒川は流れていませんよね。

東京新聞したまち支局長 榎本 哲也

すまいるたうん193号