ここ一カ月、私の仕事は、都知事選のことがほとんどでした。ですが、都知事選のことは紙面でじゅうぶん報道しましたので、ここでは触れず、都庁での取材について少し書きます。
東京都の人口は約千三百万人。いま、ロシアのソチで冬季オリンピックが開催中ですが、オリンピック発祥の地、ギリシャの人口に匹敵します。予算規模は特別会計も合わせると十三兆三千三百億円。これは、スウェーデンの国家予算とほぼ同じと、よく言われています。
国家なみの大きさの都市である東京都の取材は、それこそ内容が幅広いです。その大都市を取り仕切る都知事は、その発言の影響力も絶大です。都庁担当記者は、その発言や行動をチェックするのが基本的な仕事のひとつです。
原則として毎週金曜に行われる都知事の定例記者会見は、東京MXテレビで生中継されます。私たち記者はもちろん、都庁の職員、政財界の人たちも関心をもって見ています。私は担当記者のころ、当時の石原慎太郎知事に質問すると、あとで知人から「質問してたね」とメールが届いたものです。このように各方面から注目されている知事会見ですから、ただ聞くだけでなく、そこで知事に質問をぶつけ、会見後は知事の発言内容の背景などについて、都庁の関係部署や外部の関係者への取材も必要です。
日常の取材は、都庁幹部はもちろん、都議会議員にも行います。また、こうした都庁の建物のなかで行う取材は、都庁取材の一部です。都庁にかかわる、さまざまな立場の人に会ったり、さまざまな現場に足を運んだりしての取材が必要です。
東京都教育委員会の取材には、都内の学校の先生、子どもが学校に通う保護者などへの取材も行います。
世界一の台所といわれる築地市場も東京都の施設です。ここで働く仲卸の人たちにも、都庁担当記者はよく取材します。仲卸の人たちは朝の二時や三時から働いていますので、取材も朝早い時間です。
都心や新宿・渋谷、みなさんがお住まいの荒川区などの下町。吉祥寺など閑静な住宅街が多い武蔵野地区、高尾山などがあり自然豊かな西多摩地区。さまざまな街の表情があり、その地域が抱える問題も多種多様です。そうした地域に住む方々への取材も必要です。
伊豆・小笠原諸島も、東京都です。以前にも触れた大島の土石流災害、三宅島でおおむね二十年に一度起きている火山噴火も、都庁担当記者が扱う課題です。
小笠原諸島には、硫黄島があります。太平洋戦争の激戦地だった島です。ここも都庁担当の取材対象です。といっても現在は一般の人が許可無く上陸できませんが、年に一度、慰霊祭が行われるときに、取材の機会があります。
私もかつて、この島に住んでいた旧住民の方々と、船で島を同行取材したことがあります。片道二日間くらいかかりましたので船酔いもしましたが、島の慰霊碑を訪ねたり、旧住民の方々がかつて住んでいた場所をジャングルをかき分けて訪ねたと、ふだんなかなかできない貴重な取材ができました。
このほかにも、道路、都営地下鉄・バス、水道・下水道、花粉症対策、カラス対策、保育園、高齢者施設、都立病院、学校……などなど、暮らしに欠かせないさまざまなことに、都庁がかかわっています。みなさんがお住まいの南千住にも、都営住宅、都立産業技術高専、汐入公園など、都立施設がたくさんあります。
都知事選で当選した舛添要一さんは、知事になって、どのような施策を行うのでしょうか。都民のみなさんの視線から、良いことは良い、おかしいことはおかしいと、チェックしていきたいと思います。
(東京新聞 社会部 部次長〔前・したまち支局長〕 榎本哲也)