本が好きな人にとって、南千住は住みよいところだと思います。荒川区立図書館の中でも、南千住図書館は蔵書冊数がいちばん多いそうです。べるぽーとには、汐入図書サービスステーションもありますよね。

蔵書の数、この分野の本が充実しているなど、館の特徴はさまざまですが、日本のほぼすべての図書館が共通して守っている綱領があります。

それが、「図書館の自由に関する宣言」です。以下に、その一部をご紹介します。一部を略しています。

図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。

この任務を果たすため、図書館は次のことを確認し実践する。

第1 図書館は資料収集の自由を有する

第2 図書館は資料提供の自由を有する

第3 図書館は利用者の秘密を守る

第4 図書館はすべての検閲に反対する

図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。

図書館の自由が侵されようとするとき、われわれ図書館にかかわるものは、その侵害を排除する行動を起こす。

図書館の自由を守る行動は、自由と人権を守る国民のたたかいの一環である。われわれは、図書館の自由を守ることで共通の立場に立つ団体・機関・人びとと提携して、図書館の自由を守りぬく責任をもつ。

とても力強い宣言ですよね。私はだいぶ以前ですが、国会図書館の取材をしたときに、担当の方からこの宣言の存在をうかがい、図書館ではたらく方々が、このようなすばらしい決意を根底に持っていることに、感銘を受けました。

感銘を受けたばかりでなく、それをもとに小説を書いてしまったのが、作家の有川浩さんです。「図書館戦争」という題名で、この「宣言」を読んで、小説のイメージが浮かんだのだそうです。

この小説は、全国の本屋の店員さんがいちばん売りたい本を投票で選ぶ「本屋大賞」で、二〇〇七年の第五位に選ばれています。この小説を原作とした映画も、この春に公開されました。

先月、参院選がありました。東京新聞でもいろいろな記事を載せましたが、私は、夕刊一面に掲載した「選ぶ いま」という連載記事を担当しました。写真部のカメラマンが、今回の参院選ならではの場面を撮影し、その写真に私が短い記事を添えるという連載記事でした。

この連載の最終回で、国会図書館を取り上げました。写真は、国会図書館の大きな書庫でした。通常は入れない書庫に、取材許可をいただいてカメラマンと一緒に入り、撮影しました。国会図書館は、単なる図書館ではなく、国会議員の政策立案を支える役割があるということを書きました。記事の中では、図書館の自由に関する宣言のことや、映画「図書館戦争」のことも、少し触れました。

参院選では、毎日の朝刊、夕刊のニュースデスクを務めながら、この連載をはじめ、いくつかの記事を書きました。七月二十一日の投開票日は朝刊デスクを担当しました。

衆院選、東京都議選、参院選と、大きな選挙の報道が続きました。取材やデスクの仕事で考えたことや、選挙結果を受けて思ったことがいろいろあります。そのごく一端、私なりの拙い考えを、七月三十日付け朝刊「メディア観望」欄に書きました。

選挙が続いて、忙しい忙しいと言っているうちに、落ち着いて本を読む時間が少なくなっているなあと反省しています。夏のうちから時間を作って、図書館でなるべくたくさん本を借りて読んで、読書の秋に備えようかなと思っています。

(東京新聞 社会部 部次長  〔前・したまち支局長〕 榎本哲也)

すまいるたうん259号