第44回 解体新書と地域産業学習

先日、大阪府池田市立細河小学校の先生から私に「『解体新書と地域産業学習について』というテーマで勉強したいのでご協力下さい」と申し入れがありました。色々な話し合いのあと、現地(回向院及び延命寺)へご案内しました。

昭和8年(1771)3月4日に杉田玄白・中川淳庵・前野良沢の3人が小塚原(こつかっぱら)の刑死者の腑分けに立会い、1734年オランダ・アムステルダムで刊行され日本に渡ってきた「ターヘルアナトミア」人体解剖書が精細を極め、実物と寸分違いがないことに驚き、翻訳に取り掛かりました。

その小塚原腑分けを記念して大正11年に奨進医会によって建立された観臓記念碑をお見せしました。

ちなみに解体新書翻訳本の詳細図は橋場の平賀源内(エレキで有名)の親友で秋田藩の小田野直武(なおたけ)が描いています。

記念碑は戦火で著しく破損し戦後一度修復したのですが、コツ通りの拡張工事(昭和47年)のため新しく建立された寺院の入口前の壁にレリーフのみがはめ込まれています。お訪ねの際は、見落としやすいので注意してご覧下さい。

さて、先生のお話で驚いたのが、細河小の6年生の学習で、腑分けは誰が行ったのか?医者である杉田・中川・前野等は立ち会って見ていただけで実際メスを持ったのは一体誰であったのか?

そのようなことから身分制度問題・部落問題・戦後の開放運動・人権問題・同和問題等を通して、地域産業学習・歴史学習・社会問題学習・生活学習の勉強をしているのです。

コツ通り周辺に存在する多くの史跡を一つ一つ勉強していくことで素晴らしい学習ができます。

中世・近代・江戸・明治と勉強するには事欠かないふるさと文化館を備えた南千住図書館も近くにはあります。

地域産業として、南千住にはクツ屋さん・皮屋さん・はきもの屋さんが何故多く営まれているか、どれ一つとってみても面白く学習できる課題が転がっています。

この歴史の宝庫を地域の我々がもっとPRしていきたいものです。

まいたうん63号(2004年4月20日発行)