第129回 境内は文化遺産の宝庫

六月一日~三日と天王さまの大祭(三年に一度行われる)が晴天の内に終りました。南千住・三ノ輪・三河島・町屋と各町々は、大変な人出で渡御もりっぱにでき、氏子のみなさまの厄払いが出来たと大祭関係者として喜んでいます。

子供達の大好きな夜店(露天商)もたくさん出て人々で境内がごった返していました。

小中高学生で御輿を担いだ人、担がなかった人にも良い文化の伝承ができ良い思い出になったと思います。大勢の関係者の方々の協力の力だと考えます。

天王さまの二柱の神のうち、一柱は素盞雄命です。参集殿に入りますと箸と櫛とが飾られています。これは、1300年前の和同5年(712)に書かれた現存する日本最古の歴史書「古事記」に載っている神話に基づて飾られています。

素盞雄命が旅をしていると、川の上流から箸が流れてきました。これを見て川上に人が住んでいると思い、川を上って行くと娘を囲み泣いている老夫婦に出会いました。「なぜ泣くのか」と尋ねると「八俣遠呂智という一本胴体に八つの頭と尾を持つ怪物が毎年やってきて娘を喰らうのです。八人娘がおりましたが、櫛名田比命一人になってしまいました。」と言ったので、素盞雄命は自分は天照大神の弟であると伝え、強い酒を用意させました。八俣遠呂智が現れ、その酒を飲んで酔い伏してしまうのを待って剣で首を斬り落とし切り刻んで尾を切りました。その時に剣の刃がこぼれたので不思議に思って尾を切り開いてみると草薙の太刀と呼ばれる神剣が現れました。これを天照大神に献上したと古事記の上巻神代の話として出てきます。

この話を知らないと、なぜ天王さまに箸と櫛が置いてあるのか考えてしまいますね。自分の生れ、住んでいるところの氏神さまです。ひととき、心静かに手を合わせ、心をやすらかにする時間を持って下さい。

本殿の左右に置かれている狛犬は正しくは高麗犬と言われています。それは、古代朝鮮三国(新羅・百済・高句麗)の一国である高句麗を高麗と呼びました。その文化が高麗犬として残っているのです。

神社の境内は文化遺産の宝庫です、一つ一つゆっくり見学して自分で調べてみることは楽しいですよ。隣には荒川ふるさと文化館があり、図書館には多くの参考書があります。楽しさが倍増して、また祭りに対する見方も変り、精神が豊かになります。学習して下さい。

今年の祭礼、宮元上町に関しては子供の参加が少なかったようです。時の流れを感じます。

また、来年例祭ですが、楽しい祭りにしたいと思っています。皆様のご協力を願っております。とにかく、疲れました。

仙成こと杉山六郎

すまいるたうん第217号平成24年6月13日